第6章 陽だまり
「おいしーい!私これ大好きです」
「オマエは甘いのなら何でも好きだろ」
「ほんとに美味しいんです!甚爾さんも一口食べてみて!」
「いらねー、オレ甘いのキライ」
「絶対美味しいですから!」
ずいっとオレの目の前に一口分の乗ったフォークを差し出す繭。
コイツ、こういうとこ押し強いんだよな…諦めて口を開くとフォークがそっと咥内に入ってきた。
「どうですか?美味しいですよね?」
「…ふつー。ただ甘ぇ」
「えー!なんでこの美味しさがわかんないかなぁ」
ぶーぶー言って頬を膨らませながら、続きを食べる繭。
そうしていると、リスとかハムスターとか小動物みを感じる。
繭が食べているものに興味を示した恵にも一口分けてやっているが、恵の反応も微妙でがっくりしていた。
「ぇき?えぇき?」
「けーき」
「けーき?」
「そう!ケーキ!すごいねぇ恵は、おりこうさん!」
恵の頭を撫でて褒める繭に喜ぶ恵。
そういえばコイツも繭が来てからいろいろ変わったんだよな。
ろくに喋れねぇと思っていたけど、オレが話しかけなかったから言葉を覚えてなかっただけで、繭が来てからどんどん新しい言葉を覚え始めた。
一つ覚えると繭が喜ぶから、余計に。
「恵はえらいねぇ、いちばんおりこうさん」
「…あんま甘やかすと将来自信過剰なオトコになるぞ」
「子どもの頃はいっぱい甘やかされていいんです!大人になったらできなくなっちゃうんだから」
「オマエもまだガキだろ。オレが甘やかしてやろうか?」
「もう!とうじさん!」
「あめ!!」
ふざけて頭を撫でるとぷりぷり怒る繭。
その様子を見てオレが繭をいじめてると思ったのか、恵がオレの手をぺしりと叩いた。
「わぁ恵、私のこと守ってくれたの?ありがとう〜」
「ふん」
繭に褒められてドヤ顔の恵。コイツ…。