第6章 陽だまり
side 伏黒甚爾
繭が家に来て一週間。
オレの生活は確実に変化していた。
今までの生活はというと、金になる仕事が入るまで昼間はギャンブルか昨夜泊まった女のところでダラダラと時間を過ごし、夜はまた別の女のところに行ったり、スポンサーがいれば夜の店に飲みに行ったりというルーティンだった。
それが、別に用事がなくても家に帰ることが増えたのは確実に繭の影響だと言って間違いなかった。
現に今も昨夜の宿にした名前も知らない女が「私がいない間も家にいていいから」と何枚かの札を置いて仕事に出て行ったが、その金で買ったコンビニのスイーツを片手に自分の家へと向かっていた。
繭と出会うまで、あの家はアイツと過ごした記憶が残っているから息苦しくなる場所の筈だったのに。
「あ、おかえりなさい甚爾さん」
鍵を回して家に入ると、恵と遊んでたであろう繭がこちらを振り返る。
コイツが来てから、床に散乱してたゴミや溜まった洗い物がなくなって部屋はいつでもきれいな状態に保たれていた。
この部屋ってこんなに広かったか、と感じるぐらい。
太陽の光が部屋に差し込んでるからだけじゃなく、薄暗く感じていた部屋が明るくなったように感じるのは、繭の存在があるからなのだろう。
それがオレにはひどく眩しい。
「…コレ、オマエ甘いの好きだろ」
「お土産ですか?ありがとうございます。甘いの大好きです!」
コンビニの袋を渡すと嬉しそうにはしゃぐ繭。
こんなんで大喜びしてる様子が純粋で可愛らしいと思うから、思わずコイツの好きそうなものを買って帰ってしまう自分がいる。
「わあ!こんなお菓子初めて見ましたとうじさん!美味しそう…」
キラキラした瞳でほっぺをピンクにさせる繭。
箱入りお嬢様のコイツにはコンビニのスイーツひとつとっても初めて見るものばかりらしく、何を渡してもいいリアクションをしてくれるから面白い。
「食べていいですか?」
「オマエに買ってきたヤツなんだから好きにしろよ」
「わーい!」
こういうところ見ると、ほんとにコイツ16歳なんだと思う。