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【呪術廻戦】比翼の鳥 連理の枝 〜第一部〜

第1章 動き出した歯車



そこにいたのは、わたしと同じくらいの歳のとてもきれいな男の子。
光を受けてきらきらと輝く白銀の髪と、同じ色の長いまつ毛に囲まれた宝石のような青い瞳。
こんなきれいな男の子、初めて見た。

その男の子と目が合った瞬間、
男の子から発せられる何かに圧倒された。


思わず膝をつきそうになるくらいの圧倒的な〝じゅりょく〟。


幼いながら本能で感じた。
今までわたしの周りにいた人とは比べ物にならないくらいのちから。
その膨大な力は恐怖を感じるくらい。

圧倒されたわたしが、頭を下げたままの母の着物を握って動けずにいると、男の子のそばの大人の人が〝顔を上げよ〟と母に言った。

母は後ろに隠れるわたしを押し出して、「ほら繭。ご当主様にご挨拶して」と耳打ちした。

正直、同い年くらいの子と会うことも初めてで、友達の作り方なんてわからなかったし、見知らぬ大勢の大人に囲まれた状況と、なんだか圧倒される存在感を放つ目の前の見知らぬ男の子に、今にもその場から逃げ出したい気持ちだった。
でも、〝はじめてのおともだち〟ができるかもという淡い期待がしょげそうな心を奮い立たせて、目の前の怖い顔をした男の子の正面に立った。


「はじめまして、繭です。ごとうしゅさま…?おともだちになってくれますか?」


母に言われた通り、挨拶する時はきちんと相手の顔を見て笑顔で、という教えを守れただろうか。
不安から少し笑顔は引き攣ってしまったかもしれない。


わたしの挨拶にごとうしゅさまは一瞬おどろいた顔をした。
それから、

「だれがおまえみたいクソザコと友達になんかなるか!」


と顔を真っ赤にして怒ってしまった。


わたしはすごくショックを受けた。
頑張って挨拶の練習もしたのに、逃げたい気持ちを必死で抑えてここまで辿り着いたのに、初めてお友達ができると思ったのに。

いろいろな思いが一気に頭を駆け巡って涙が溢れそうになったが、〝人前で泣くのはみっともない〟という母の教えから、涙が溢れる前に猛ダッシュでその場から逃げ出した。



どこをどう走って来たのか、正直もうわからない。
着物の裾が足に絡まって何度も転んだ。
それでもとにかく誰の目にも触れないところに行きたくて、泣きながら広いお屋敷の中をむちゃくちゃに走り回った。

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