第4章 邂逅(かいこう)
ぶわっと体から抑えきれない怒りが呪力となって発露する。
呪力にあてられた繭の兄は立っていることができず、膝を折って地面に這いつくばり失禁した。
(落ち着け……。欲しい答えを得るためには感情を抑えろ)
久しぶりに感じた、コントールできないくらいの感情の爆発。
小さい頃は気に入らないことがあるとよく癇癪を起こして呪力を爆発させ、周りにいる人間を昏倒させたものだ。
無意識に浅くなっていた呼吸に気がつく。
両手で顔を覆い、見たくないものを見ないように視界を閉ざして、大きく息を吐き出す。
「…アイツは…無事か?」
自由に呼吸をすることすら許されず、喉からひゅーひゅーという息漏れの音をさせた繭の兄ががくがくと何かに取り憑かれたように頷く。
「嘘だったらお前を殺す。嘘に加担したお前の家族諸共殺す…本当だな?」
潰れた蛙のような肯定の意の声を上げ、意識を失ったソイツ。
今最も欲しい答えは得ることができたので、もう用済みだ。
繭が生きているということさえわかれば。
後は俺が見つけ出せばいいこと。
待ってろよ、繭。
こんなクソみたいな家には二度と戻らなくていい。
お前を傷つける全てのものから、俺が守るから。
絶対にお前を見つけ出すから。