第4章 邂逅(かいこう)
薄々感じていた嫌な予感が確信に変わる。
「…繭に何があったのか教えろ」
「……」
「チッ。使えねー」
頑なに口を閉ざす繭の兄にイラつくが、六眼を再び発動させて呪力の痕跡から繭の跡を辿る。
俺があげたプレゼントにも携帯電話にも繭の痕跡はしっかり残っている。
それから………。
「…オイ。何で繭のベッドにオマエと繭二人分の痕があんだよ」
そこでは繭の感情の昂りとともに強い呪力の振れがあったことを感じる。
それから痕跡はベランダへと続いて…。
嫌な胸騒ぎと共に鼓動がだんだんと速くなって、最悪の事態を考え始める。
繭の跡はそこで途切れていた。
脳が無意識にいやでも考えうる最悪のパターンを瞬時に弾き出してしまい、恐怖や怒りの感情が渦巻いて、耳元で鼓動が激しく高鳴る。
俺の感情の高ぶりとともに、普段コントロールしているはずの呪力のストッパーが外れ、自分の体から膨れ上がっていくのを感じる。
部屋の中心で俯いたままの繭の兄に視線を向けた。
「ひっ…」
「…お前だよな。繭に何した?」
「違う!私は……繭は……」
「ぐだぐた言ってねえで早く答えろ!!テメェの手に繭の痕跡がべったり残ってんだよ……」
「ぁ…………」
呪力に耐性のない人間に膨大な呪力を際限なく浴びせ続けるとどうなるか。
繭の兄の顔からは汗と涙がだらだらと垂れ流れ、口はぱくぱくと動くだけで意味のない音を発している。
「お前が喋ってんの見るとイラついて殺しそうだから、俺の言うことに頷くだけでいい…」
「ぁ……うぁ……」
「お前、繭を犯したのか?」
「……ひが……ひぁう……」
体をブルブルと震わせながら、必死に首を振る繭の兄。
きれいな顔はいろいろな液体でぐちゃぐちゃになって歪んでいる。
「それでも繭に触れたのは間違い無いな?……アイツは、ここから飛んで…それからどうなった?」
「ひぁ……ひぁなぃ……ひぁな…………」
「ちゃんと答えろよ、殺すぞ?」
「…………ぁ……」