第4章 邂逅(かいこう)
side 五条悟
今年の誕生日プレゼント、アイツは気に入っただろうか。
柄にもなく、携帯電話のロック画面を見つめたままそわそわと落ち着かず、先ほどから何度もロックしては解除してを繰り返していた。
もうすぐ、0時になる。
いつもだったら、プレゼントをあげたその日に必ず電話してきて、プレゼントの感想だとかうざいぐらいに何度も礼を言ってくるのに。
ムカつくけど、アイツからの連絡を待ってしまっている自分がいる。
(今年のプレゼント、気に入らなかったとか?)
子どもの頃から毎年、アイツの誕生日が近づくと、アイツの喜ぶプレゼントは何かと頭を悩ませていた。
アイツが雑誌を見ていいなと言ってるものをさりげなくチェックしておいたりだとか、俺らしくない努力もしてきた。
その甲斐あって毎年すごく喜んでいたと思うけれど…。
今年は、アイツが今欲しいものも興味のありそうなものも思い浮かばなくて、アイツが喜ぶものというより、俺がアイツに受け取って欲しいものを贈った。
俺の目と同じ色をした一粒の宝石がついた、シンプルなネックレス。
鈍いアイツに俺がそれを贈る意味なんて気づくはずもないと思うけど、いい加減気づいてくれよなんて願いも込めて。
考えに耽っていると、いつの間にか0時を超えていた。
(俺からプレゼントどうだったって聞くのはだせぇよな…)
今日はもう寝てしまったのかもしれない。
そう思うことにして悶々とする気持ちを抑え、
「改めて、誕生日おめでとう。おやすみ」
とだけメッセージを送って、今日はもう眠ることにした。
早くアイツが、嬉しそうに〝悟、ありがとう〟って言って、はにかんだように微笑む姿を見たい、そう思いながら瞼を閉じた。
翌日、午後になってもアイツからの連絡はなく、昨日送ったメッセージも既読がつかなかった。
こんなこと初めてで。
携帯に電話をかけても繋がらない。
何やらいつもと違うパターンに嫌な胸騒ぎがして、アイツの家に向かった。
連絡も入れず出向いた俺に、繭の母親はひどく驚いた様子で俺を出迎えた。