第4章 邂逅(かいこう)
そうすると後々かなり厄介なことになるな…。
考えるよりも体が先に動いて一度は助けてしまったものの、やはりここに置いて行った方が得策なのでは。
「…」
少女の顔を覗き込む。
先ほどは既視感を感じたが、改めてじっくり見ると知った顔ではない。
だが、今は憔悴しきって血の気を失っているが、青白ささえ感じる透き通るようなきめ細やかな肌と、頬に影を落とす伏せられた長いまつ毛、すっと通った小さな鼻、形の良い薄桃色の唇…、美しい少女であることは見間違えようがなかった。
ここにこのまま置いていけば、先ほどの男どもでなくても、どうなるかは容易に想像がつく。
「めんどくせー…」
自分にもまだ良心のかけらというものがあったのか。
いや、何かあればこの少女で一儲けできるだろうなという邪心の方が勝っただけかもしれない。
少女趣味の変態相手でも、術師ということなら禪院家相手でも金は引っ張れるだろう。
舌打ちをしながら、ぐったりと力の入らない体を抱き上げる。
全く意識のない状態だというのに、少女の体はひどく軽い。
近くでよく見ると、着ているセーラー服はところどころ土がついていて元々あったであろうスカーフはないし、セーラー服から覗く素肌には細かい傷がたくさんある。
膝は擦りむけて血が滲んでいるし、靴も履いていない。
オレが言えたガラじゃないが、明らかに〝訳アリ〟なのは間違いない。
ため息をついてから少女を横抱きにして自分の胸にもたれかかるように動かすと、少女が触れる部分からほのかな熱を感じた。
「あったけ…」
それだけが唯一、コイツを拾ったメリットかもしれない。
冷たい夜風が吹きつけ、少女は無意識なのかオレの胸元に擦り寄ってきた。
オレも暖を取るように少女を抱え直す。
(…これじゃ適当な女ひっかけることもできねーな)
とんだお荷物を拾っちまったと独りごちて、久しぶりの自宅へと足を向けた。