第4章 邂逅(かいこう)
side 伏黒甚爾
「さむ…」
今にも雪が降り出しそうな寒空の下。
ここ最近一番の寄生先にしていた女の家から身一つで出てきたオレは、深夜の繁華街を行くあてもなくうろついていた。
(だりー…)
夜の商売をしている女らしく、顔とスタイルは人並み以上で羽振りがよく、オトコゴコロというモノをよく心得た、割り切った関係の都合のいいオンナ、だと思っていたのに。
だんだんと〝私以外の女は切って〟とか〝甚爾くん以外の男はいらない〟とかほざいて、仕事にも行かずオレが他の女のところに行かないよう監視するようになり、〝お互い割り切った関係で〟という境界線を破ってきた。
恵の世話を任せられるのも都合が良かったというのに。
女っていうのは、どうしてこうも面倒臭い生き物なのか。
どんな女でも初めは〝都合のいい相手でいい〟とか〝他に女がいてもいい〟とか言う癖に、オレが自分のものになったと思ったら、次から次へと要求が増えてくる。
縛られるのは嫌いだ。
一人の相手を愛して愛される、なんてことはオレの性分じゃない。
めんどくせぇが、次の寄生先を探すか。
とりあえず、今夜の宿と飯だけでも。
ネオンが煌めく繁華街を適当な女がいないか探しながら彷徨っていた時、横の路地裏から興奮したガキたちの声が耳に入ってきて、なんとなしに視線を向けた。
「やばっ、超かわいくね?」
「ほんとだ。ねーキミ、セーラー服の女子高生がこんな時間にこんなとこいたら危ないよー?」
「てか怪我してね?靴も履いてないし。なんかワケありっぽいし、よかったら家来なよ」
「おーい、聞いてますかー?」
そこには路地裏の汚い壁に背中をつけたまま座り込んだセーラー服の少女と、その少女に群がる発情期の猿みたいな若い男が数人。
「てかまじでかわいくね?一般人?」
「この制服って超お嬢様中学のじゃね?JKどころかJC?見えねー」
「金持ちの家出少女とか?」
勝手に盛り上がるガキどもに対して、少女は俯いて何も喋らない。
ヤバい薬でもやってトンじまってるのか?
何も反応を示さない少女に痺れを切らしたのか、男の中の一人が少女の腕を掴み、引きずるように立ち上がらせた。
(あーあ、あのガキ輪姦されちまうな)
ま、オレには関係のないことだ。
それより今日の寝床を探す方が重要な問題。