第3章 壊れた世界
なんだか頭がぼーっとする。
頭も体も熱くて、はぁはぁという自分の息遣いがやけに大きく聞こえる。
「繭…苦しい?」
「あつい…苦しいよぉ、おにいちゃん…」
「可哀想に。お兄ちゃんが楽にしてあげる」
私の体を支えてそっとベッドに横たわらせるお兄ちゃん。
ぼーっとした頭で制服のスカーフが解かれるシュル、という布が擦れる音が聞こえる。
プチプチとボタンが外れる音がすると、胸の前が開かれて息苦しさが少しましになった。
「可愛いよ繭…学校のセーラー服、清楚な繭にすごく似合ってる。でも制服の下はもう大人の女性の体で…いやらしいね」
お兄ちゃんの冷たい手が開かれた素肌の上をなぞって行く。
むずむずして、恥ずかしくて、抑えてもわたしじゃないみたいな声が出てしまう。
「ふっ…んん…っ…はぁっ…ぁ…」
「繭は昔からずっとお兄ちゃんのお姫様だよ。繭の王子様はお兄ちゃんでしょう?誰も僕から繭を奪えないように、お兄ちゃんのものにしてあげる」
お腹を撫でていたお兄ちゃんの手がすっと下に下がって、スカートの中から下着に触れる。
その瞬間、背筋からぞわりとした感覚が全身を駆け巡った。
「やだっ!!」
反射的に体が動いた。
精一杯の力で覆い被さるお兄ちゃんを突き飛ばして、ベッドから転がるように落ちた。
力が入らなくて受け身が取れず、体を打ってしまったけど、それでも構わず震える足に力を入れて立ち上がる。
「繭…どうしてお兄ちゃんを拒むの?」
お兄ちゃんが部屋の扉と私の間に立ち塞がる。
私の部屋は3階。
一瞬の判断でお兄ちゃんに背を向けて走り出し、バルコニーに繋がる大きな窓に向けて呪力を放った。
窓ガラスが砕け散る。
窓に向かって走りながらも頭を腕で庇って、体の至る所が切れる痛みを感じながらバルコニーの手すりから跳躍した。
感じる浮遊感。
地面に接触する寸前に呪力を練って衝撃を減らしたけど、それでも体制を崩して地面に転がる。
すぐさま立ち上がろうと力を込めた足に痛みが走ったけど、反転術式で治癒しながら走り出した。
お兄ちゃんが私を呼ぶ声が聞こえる。
後ろを振り返るのが怖くて、必死で走って家の敷地を出て、とにかくここから離れた遠い場所に行きたくて足を動かし続けた。