第3章 壊れた世界
しばらくそうしていると、部屋の扉を3回ノックする音が聞こえた。
急いで涙を拭うと、ドアが開いて。
「繭、入るよ」
「…お兄ちゃん」
湯気の立つマグカップを持ったお兄ちゃんが入ってきた。
「体を冷やしたら良くないって聞いたから、よかったらこれ飲んで。あったかいハーブティー」
「…ありがとう」
お兄ちゃんがコトリ、と机の上にマグカップを置いてくれた。
お兄ちゃんとの距離が近くなって、体に少し力が入る。
気まずさを誤魔化すように、マグカップに手を伸ばしてお茶を飲んだ。
「…美味しい?」
「うん…初めて飲む味がする。なんのハーブ?」
「体があったまってリラックスする効果のあるハーブなんだって」
確かに体がポカポカしてきて、ちょっとふわっとする感覚がする。
すごくよく効くハーブなのかな。
「…繭、大丈夫?なんだか目がとろんとしてきたよ」
「…なんか、ぼーっとする」
「一度ベッドに横になろう」
半分ほど中身の残ったマグカップを私の手から取り上げるお兄ちゃん。
力が入らなくなった体を支えるために、お兄ちゃんの手が私の体に触れたとき。
「っ!」
ビクッと反応してしまった。
肩に触れられただけなのに、前にお風呂で胸を触られたときみたいな、くすぐったいような変な感じがして。
なんか、体がおかしい…。
変な感じのする体を抑えながら、お兄ちゃんにベッドに連れていってもらう。
「お兄ちゃん、わたしちょっと体調が悪くなってきちゃったみたいだから休むね。もう大丈夫だから…」
「さっきより顔が赤い…心配だから繭が寝つくまでここにいるよ」
確かにさっきよりも体中が熱くなって、息苦しくなってきた。
お兄ちゃんがいなければ、制服を脱いですぐベッドに入ってしまいたい。
「一人で寝れるから…お兄ちゃんにうつしちゃう」
「繭は優しいね…そういうところはずっと小さい頃から変わらない。でも小さい頃はもっとお兄ちゃんお兄ちゃんて甘えてくれたのに、最近はそれもなくてちょっとさみしいな…」
お兄ちゃんのひんやりした手が熱を確かめるようにおでこに触れる。
冷たくて気持ちいい…。