第3章 壊れた世界
「え、お前京都の高専行くの?」
悟から急に「今日時間ある?」って連絡が来て、ちょうど期末テストが今日で終わって早帰りだったから、大丈夫だよって返したら、学校まで迎えに来てくれて。
相変わらず学校の女の子たちにキャーキャー言われながら学校を後にして、駅前の喫茶店に入った。
甘党の悟はミルクたっぷりのカフェオレにぼちゃぼちゃと角砂糖を落としている。
「うん」
「何でだよ」
「だって、家から近いもん」
「それがうぜえんだって。なんかあったらすぐ呼び戻されそうだし。…俺、東京の高専行くつもり…お前も来いよ」
「うーん…」
紅茶にミルクを入れながら考える。
実家を離れて暮らすなんて考えたこともなかった。
でも悟がいるなら、知らない人ばかりの中でも心強いかも。
お父様とお母様は何て言うかな。むしろ「悟様について行きなさい」って言われる気もする。
お兄ちゃんは…たぶん嫌がるかも。
「ちょっと…考えてみようかな」
「そうしろよ。…少なくとも俺はお前が来てくれたらいいなって思ってるから」
頬杖をついてそっぽを向いた悟だけど、その耳はちょっと赤くなっている。
「私も、呪術高専なんていうとこちょっと怖そうだし、悟がいてくれた方がちょっと安心」
「どうせどいつもこいつも俺に比べたら雑魚ばっかりだろ。」
相変わらず口の悪い悟だけど、実は優しい性格で、照れながらもたまに嬉しい事を言ってくれるのはここ数年の付き合いでわかってきた。
「…それよりコレ」
おもむろに紙袋を差し出した悟。
「なに?」
「今日誕生日だろ?…プレゼント」
「えっ!…毎年毎年ありがとう…」
高級感のある紙袋を受け取る。
出会ってから毎年、悟は欠かさず誕生日プレゼントをくれていた。
直接会えない時は送ってくれたり、お家の人が届けてくれたりして、意外にも悟はそういうところはマメだった。
「今年はなんだろう…楽しみ」
「別に大したもんじゃねーから。家帰ってから見て」
「うん!…ふふ…ありがとう」
紙袋をぎゅっと抱きしめる。
悟は毎年素敵なものをプレゼントしてくれるから、開ける瞬間が楽しみだ。
他愛もないことを話しているとあっという間に時間が過ぎて、門限が近くなった私は、悟に再度お礼を言ってから家まで送ってもらった。