第2章 罅(ひび)※
お兄ちゃんは、どうしてあんなことをしたんだろう?
あれにはどう言う意味があるの?
言葉にできない思いを抱えて、いつもより強くぬいぐるみを抱き締めながら眠った。
小さい頃、絵本の中に出てくるお姫様に憧れていた。
子どものわたしにとっての王子様は優しくて頼りになるお兄ちゃんで、わたしはお姫様だった。
そんなふわふわした甘くてまあるくて優しいお菓子みたいな世界。
でも、悟と出会って許嫁になって、私の王子様は悟になったのかな?
私もただの守られてばかりのお姫様ではいられないこともわかってきた。
そうやって少しずつ、私の世界には罅が入り始めていたこと、この時の私はまだ気づいていなかったの。