第2章 罅(ひび)※
びっくりした。
小さい頃はお兄ちゃんとお風呂に入っていたこともあったけど、それも数年前までで、いつの間にか母に「繭もそろそろ一人でお風呂に入れるようにならなきゃね。いつまでもお兄ちゃんに甘えてばかりではダメよ」と言われてから、二人でお風呂に入ることはなくなっていた。
クラスメイトの子たちとの会話で、いまだにお父様とお風呂に入っている子がいるってすごくその子がからかわれていたことを思い出す。
でも…お父様じゃなくて、お兄ちゃんだから、おかしくはないのかな…?
「繭に何かあったら心配だから、一緒に入ろう。久しぶりだね」
「うん…」
なんだか恥ずかしいような、変なモヤモヤがあったけど、優しいお兄ちゃんの提案を断るのも申し訳なく思って、思わず頷いてしまった。
部屋に着替えを取りに行ってから、二人で脱衣所に入り、服を脱ぐ。
昔は何とも思わなかったのに、何となくお兄ちゃんに裸を見られるのが恥ずかしい気がして、タオルで体を隠して浴室に入ろうとしたら、くすりと笑われた。
「恥ずかしいの?繭」
「えっと…わかんないけど、なんとなく…」
「家族なんだから恥ずかしいことなんてないだろう?…繭も女の子になったんだね」
「わたし寒いから先に入るね!」
タオルで隠していても、お兄ちゃんに体をじっと見られると、なんだか居心地の悪さを感じて、逃げるように浴室に入った。
お兄ちゃんはゆっくりお風呂に入ろうと言ったけど、わたしは体を隠すために早く湯船に浸かってしまいたくて、急いで体を洗っていた。
浴室のドアが開く音がして、ぺたぺたという足音が近づき、私の後ろで止まる。
「繭、昔みたいに洗いっこしよう」
もうほとんど体は洗い終わってしまった。
お兄ちゃんは椅子に座る私の後ろにしゃがんで、泡まみれになった体を素手で撫でた。
「ひゃっ…」
「昔と変わらないね。繭の肌は真っ白ですべすべしてて、マシュマロみたい。美味しそうだね」
「お、にいちゃん…くすぐったいよぉ」