第11章 再会
side 五条悟
そんな顔させるつもりじゃなかった。
俺、勝手に自分の中でストーリーを作り上げてたんだ。
俺の許嫁って利用価値のせいでお前は攫われてしまって、俺の助けを待ってるはず。
世間知らずなお前はこの男にいいようにされてるんだって。
俺がそこから救ってやれたんだって。
勘違いしてたのは俺だけで。
あのお前の表情を見てわかったよ。
お前はこの男を愛してたんだって。
認めたくないけど、
お前の絶望の表情も、
目の前の男の命を取り戻そうと死に物狂いになってる姿も、
全部その事実を裏づける。
だとしたら、俺がしたことって何の意味があった?
いや、違う。
もともと俺たちは星蔣体である天内を護衛して同化を成功させるのが目的で……でもその任務もあの男のせいで失敗に終わった。
傑も天内もあの男に殺された。
だから俺は、あの男を………。
必死で頭を回転させて、俺がしたことの意味を見つけないと気がおかしくなりそうだった。
男の胸に手を当てて自分の呪力を流し込み、反転術式を施す繭。
少し前に生命活動を停止しているだろう肉体には、おそらくなんの意味もなさないことだ。
俺の本来の任務からすると、星蔣体を殺害した男の命を繋ぎ止めようとしている繭の行動は決して赦されるものじゃない。
でも、今の俺には繭を止めることは出来なかった。
どれくらいの間、そうやっていただろう。
オレも繭も一言も発さず、時が止まったようにその場から動けずにいた。
おそらく最大出力で反転術式を稼働させ続けていた繭の体は呪力切れを起こしたのだろう。
膝が折れて繭の体が後ろに傾いた。
思わずその体を抱き留める。
力が抜けたその体は驚くほど頼りなくて、青褪めた顔色は整った造形も相まってまるでビスクドールのよう。
「繭……」
今にも意識を失いそうな繭は、必死で瞼を閉じないよう唇を噛み締めているせいで、形のいい唇からは血が滲んでいた。