第11章 再会
「これ以上やったら、お前の方が倒れちまう」
目の前の男のことしか目に入っていない繭は俺の方に目をやることもなく、俺の言葉に反応することもなく、またフラフラと男の元に近づいて行く。
覚束無い足取りで歩く、血の気の失せた繭の姿は痛々しくて見ていられない。
俺のせいだ。
このままだと本当に繭は死ぬまでやめないかもしれない。
男の体に手を当てて呪力を流し込む繭の背中に手を当て、自分の中の呪力を流し込んだ。
六眼を通して見ると、俺の呪力が繭の体の中を巡るのが見えた。
「さとる…ありがとう……」
視線は男に向けたまま、
それでも俺の名前を呼んでくれた繭に、涙が出そうになった。
どれだけの間そうしていただろう。
繭が男の体から手を離すと。露出した傷口から滴る血はいつの間にか止まっていた。
反転術式で傷口を塞ぐことが出来たからなのか、それとも体内に出血するほどの血液がなくなったせいなのかは判別がつかなかった。
何も言わず携帯を取り出し、どこかへ電話をかけ始める繭の姿をただ黙って見ていることしかできない俺。
男の姿を見た時あんなに表情を歪ませていた繭だけど、今は感情を削ぎ落とされたかのように無表情だ。
ただ淡々と必要なことをこなしている姿はまるでロボットかアンドロイドのようで、見ているこっちが不安になってくる。
大丈夫か?なんて、俺が一番言ってはいけない台詞なのに。
電話を切ると、俺の方に振り返った繭。
会ってから初めてまともに目が合った気がして心臓がどくりと跳ねる。
「甚爾さんの体は回収して行く」
俺を映した瞳からはなんの感情も読み取れない。
怒りも悲しみも何も。
俺がそいつを殺したのはわかってるはずだろ?
なのに何でなにも言わない?
「…甚爾さんとなにか話した?」