第11章 再会
お前と初めて会った日、母親の後ろから恥ずかしそうに顔を覗かせた小さなお前に酷いこと言って傷つけた。
ほんとは〝友達になってほしい〟って言われてすごく嬉しかったのに、ガキの頃の俺は、いや今もだけど素直に嬉しさを表現できなくて、あんなこと言っちまった。
自分が悪いんだけど、それから俺にびくびくしてるお前を見て心が傷ついた。
だから、初めてお前が俺に笑顔を見せてくれた時、ようやくほっとしたのを覚えてる。
十年経った今でも、お前との思い出は俺の記憶の中に深く刻まれてる。
笑った顔も怒った顔も泣きそうな顔も、どれもが俺にとっては大事なお前のカケラ。
俺の目の前から忽然と姿を消してしまった俺の中のお前の記憶はそこでぴたりと止まってしまったから、何度も何度もお前と過ごした時間を思い返してた。
それからすごく後悔した。
お前に〝好きだ〟って伝えなかったこと。
俺が変なプライドとか恥ずかしさとか全部捨てて、お前に自分の気持ちを素直に伝えられてたら、俺たちの未来は変わったのかな。
繭、お前ともう一度逢えたら今度は絶対にお前を離さない。
夢にまで見たお前との再会が、こんな突然訪れるなんて。
散々俺を苦しめてくれた男が呪いを残して息絶えた。
人生で初めてと言っていいほどのダメージを受けた体は、会得したばかりの反転術式をフル稼働させていても修復が追いつかないほど。
目の前の脅威が去り、肩の力が抜けたところに新たに呪力の気配が近づいているのを感じた。
(まさか仲間か?)
正直、体力気力ともに削られまくった今、目の前の男と同レベルの術師が来たとしたら俺でもキツい。
しかし背後に近づく呪力の気配は、俺がよく知った、そしてずっと探し求めていたものだった。
まさか………。
「繭……?」
期待と不安が交差する中、おそるおそる後ろを振り返る。
そこには俺が夢にまで探し続けていた少女がいた。
最後に会ったセーラー服姿よりも少し大人びて綺麗になった繭。
一瞬、目が合った。
今まで何してたんだよ。
どこにいたんだよ。
ずっとお前を探してた。
元気なのか?
言いたいことはたくさんあるはずなのに、実際に本人を目の前にしたら何も言葉が出てこなくて、縋るように名前を呼ぶことしかできなかった。