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【呪術廻戦】比翼の鳥 連理の枝 〜第一部〜

第2章 罅(ひび)※




side 繭

〝ごとうしゅさま〟のお家に行って、大きな黒豹みたいなおにいさんと会ってから、どれくらいの月日が過ぎただろう。


わたしと母は何か行事ごとがあるたびに〝ごとうしゅさま〟のお家に呼ばれて行くことが度々あった。
そのたび〝ごとうしゅさま〟にご挨拶に行ったけど、わたしは初めて会った時のショックがずっと残っていて、怖くてろくにお話ができず母の後ろに隠れていた。

〝ごとうしゅさま〟はいつもたくさんの大人に囲まれてて、面白くなさそうな顔をしてて、わたしはいつまた〝クソ雑魚〟って言われるのかってびくびくしてた。

でも、会って何回目か、母の後ろに隠れたまま小さい声で挨拶をした時、

「…〝ごとうしゅさま〟っていうのやめろ。俺には〝悟〟って名前があんだよ」

「さとる…さま?」

「〝様〟つけんな気色悪ぃ。〝悟〟って呼べ」

いつもはわたしをじっと見たまま何も喋らない〝ごとうしゅさま〟がその日は声をかけてきた。

周りの大人たちはざわついていた。
母も戸惑った様子だった。

「そんな…ご当主様。失礼に当たります」

「コイツ将来俺の…五条家の嫁になるんだろ?かまわねーよ。」

「わたし…」

「〝繭〟だろ」

意外なことに〝ごとうしゅさま〟もとい〝悟〟はわたしの名前を知っていた。
わたしのことなんか全然興味ないと思ってたのに。

「おまえがちゃんと俺のこと名前で呼ぶんなら、しょーがねーから、なってやってもいい…〝ともだち〟」

悟はどこか怒ったようにほっぺを赤くして、ぷいっとわたしから顔を逸らしてしまったけど、単純なわたしは今までのことも忘れて嬉しくなってしまって、思わず笑みが溢れてしまった。

「さとる…おともだちになってくれてありがとう。」

「…っ、俺の友達だっていうからにはもっと強くなれよ。俺は弱いやつなんか友達にいらねーからな」


ちょっと乱暴で。
ちょっと怖いけど。
わたしの初めての〝おともだち〟。


それからわたしたちは、というか一気に壁が無くなったわたしは、お屋敷に行くと〝悟〟〝悟〟とうるさいほど懐いてしまって。
意外なことに悟はそれを許してくれて。
怖かったお屋敷も、悟に会える場所という認識に変わって、遊びに行く日を心待ちにしていた。

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