【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第3章 直哉との3年間②※
多分この時は自分がどんな格好だったかすら、分かっていなかっただろう。
紬の着物は走って着崩れていて、こんな深夜に幼い女の子がそんな姿で1人で夜道を歩いていたら、誰だって車を止めるだろう。
ななはそんな事も考えられなくて、男達から走って逃げようとした。
「早く、警察に連絡しろよ。」
車内から男の声が聞こえる。
ななは捕まりたくなくてそのまま走ると、1人の男に手を掴まれた。
「ここで一緒に待っててあげるから、1人で行かない方がいいよ。」
それは本当に善意での言葉だった。
ななにはそれが迷惑でしかなくて、ジワっと涙が出た。
自分は本当に子供で何も出来ない。
ただ家に帰る事も。
ななを車の中に押し込める訳にもいかずに、車から出て来た男達がななの周りを囲んだ。
それでやっと、ななは諦めた。
ああ、私はあの場所に連れ戻されるんだ。
掴まれた手が痛い。
でも。
もうどうでも良かった。