【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第19章 私の直哉くん※
その時、襖が開く音が聞こえて、ななが直哉の部屋を出たのだと分かった。
すぐにななの足音がこっちに向かってくる。
さて、ななはどんな顔をしているか。
ワザと開けておいた襖に、ななを確認した。
こめかみが切れて流れていた血は、頬を落ちる時にはななの涙で薄まっていた。
ぎゅっと噛んでいる唇が、直哉の部屋ではその涙を我慢していたのだと、悟に教えた。
「はっー。」
悟に見向きもしないで、2人の部屋を通り過ぎていったななに、悟は嬉しそうに笑った。
「直毘人さん、悪いけど適当な部屋貸して。」
そう言って悟はすぐにななの後を追った。
「……青臭いな。」
そう言って直毘人はグビッとまた酒を飲む。
一瞬だけ、悟の表情に甚爾の面影を見た気がした。
何にも固執しないで、自分以外信用しないで、ただ己の力だけで突き進んだ男。
だけどその面影も、さっきの悟の顔ですっかり薄れていた。