【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第18章 始まりと終わり※
禪院家から東京まで手を繋いで帰ってきた。
決して優しくは無い言葉を浴びせながらも、握られていた手は、どんな時の悟よりもその感情を表してくれていた。
その手は、ななが好きだと、言葉にするより伝わった。
ああ、だけど。
その頃の悟は本当にもう居ない様だ。
初めて悟と体を合わせたと言うのに、抱いて来た悟からはあの時のようなななに対する感情は何も感じなかった。
覆っている手から涙が溢れた。
自分は今泣く権利はあるのかな?
あるよな。あんなに酷く抱かれたのだから。
あの心変わりはななのせいじゃ無い。
禪院甚爾との闘いで、悟が得た凡人には分からない『何か』なのだから。
ななが泣く権利があるのは、あんな風に扱われた事だけだ。
そもそも悟の気持ちに応えたことなんて一度も無かった。
だから、彼の心変わりに胸を痛める権利なんて無い。
分かっているのにどうしても。
その涙は止まらなかった。