【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第18章 始まりと終わり※
寝ているななの額に手を置く。
少しピクッとしても、ななは目を覚まさなかった。
このままずっと、目を覚まさなかったらいいのに。
そうして俺の腕の中で寝ているななを、ただ抱きしめてその心を満たそうか。
悟はななの体をギュッと抱いてみた。
生暖かい温もりは自分の感情とは裏腹に、心地よい温もりを与えてくれる。
この女が好きだった。
こうして手の中に収めて、それだけで心が満たされる位に。
失った感情に戸惑いは無かった。
ただ、同じように抱いていても、何も浮かばない感情に悟はゆっくりと目を閉じた。
こうしてななとの別れを覚悟していた頃に。
運命はまた、悪戯にななの未来を奪おうとしていた。
それに気付かずに、無情に抱き合った時間さえも幸せに思える位に。
その運命はななの全てを変えたのだった。