【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第18章 始まりと終わり※
俺は横で寝ているななの顔を見た。
涙の痕がハッキリと残っている顔は、寝ているのに顔を顰めている。
ワザと酷く抱いた訳では無い。
ななをそう扱いたくて、自分のしたい様に抱いたのだ。
あんなに大切にして、愛を囁いていたのに、俺から逃げようとしたななに苛立ちが全く無かったと言えば嘘だろう。
だけどもし、このななの姿に心を痛めたなら……。
天内に対して何も感じなかった自分の方が、到底許せない。
だから、良かった。
今このななを見ても何も感じない。
禪院甚爾とやり合って、俺が掴んだこの世界には、どうやらその感情が不要らしい。
同じで良かった。天内もななも。
だけどもう。
あの時の様な気持ちを持ってななを抱く事が出来なくなった事が少しだけ、人間としての在り方に虚無感を覚える。