【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第17章 夏の終わり※
「……驚き過ぎ…。」
薄暗い食堂の中で、目を凝らさなければ悟が笑みを浮かべているのは見えなかった。
「…だって…いきなり居るから…。」
ななは激しくなっている心臓の音を紛らわす様に、屈んでペットボトルを拾った。
「?!」
転がったペットボトルのすぐ前に、悟の足が見えた。
いつの間にかテーブルからこちらに来たようだ。
先ほどから音も無く近づいて来る悟が不気味だった。
ななはゆっくりと顔を上げた。
無表情の悟は全く感情が読めなかった。
ただななを見下ろしている。
サングラスの奥の六眼に喉がゴクッと鳴った。
「傑には会いに行ったのに、俺の事は心配してくれなかったの?」
ジッとななを見て、全く表情が動かない悟に、ななは思わず後ろに下がった。
ななが一歩下がれば悟も一歩近付く。
ゾクゾクと背中に悪寒が走り、それが恐怖だと気がつくのにたいして時間はかからなかった。