【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第15章 新しい感情※
悟が慰めてくれる。
そんな事は期待していなかったけど、涙が流れてななは自分の手首で涙を拭った。
「優しくないね…。」
「………よく言うよ。」
別に俺の優しさなんて求めてないくせに。
俺がこうして迎えに来る事が、どんなに珍しいかも分かってないくせに。
悟の眉が少し下がると、ななの手を取って歩き出した。
抱かれて拐われたあの日より。
一緒に帰る様に引かれているその手に、ななは薄っすら目を開けた。
握られている手を見てから、悟の後ろ姿を見上げた。
一瞬…本当に一瞬、禪院家に居る時に悟を思い出した。
帰りの新幹線の中、悟はずっと手を握っていてくれた。
他の男の為の涙は渇かなかったけど、悟はその手は離さなかった。
ただ握ってくれているその手の感触がとても気持ち良くて、結局最後までその手を離す事は出来なかった。