【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第15章 新しい感情※
なんで謝られているのだろう。
ああそうか…。
寝取られたからか。
そんなの、直哉を責めればいいのか、目の前の綺麗な女の子を責めればいいのか。
もう分からなかった。
泣きながら彼女を罵倒したら、何か変わるだろうか。
そんな事が頭をよぎって、彼女を見た。
少し前まで、彼女の様に自分も華奢だった。
直哉はきっと、ゴツゴツしたきた自分の体より、彼女の様な体の方が好きだろう。
直哉の側に居るタイミングも、離れるタイミングも完璧だった。
直哉を煩わす事はしない彼女に。
直哉の事だけを考えられる彼女に。
負けただけだ。
「……返してよ……。」
ボソッと声が出たと思ったら、自分の目から涙が出ていた。
ななの涙を見て、小春の顔が少し歪んだ気がした。
謝るくらいなら返して欲しかった。
あの、自分だけしか見ないで、自分だけのモノだった直哉を。
その言葉がどんなに惨めで、みっともないと分かっていたから。
声は出なかった。