【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第15章 新しい感情※
初めて声をかけられた驚きより、彼女が真っ直ぐと自分を見てきた姿勢に体が強張った。
また動悸が激しくなったのは、彼女の目線が鋭く自分を捉えているからだ。
「………出て行くよ…。」
ここには戻るつもりなんか無い。
ハッキリとそう告げたいのに、何故か声は小さく顔は俯いた。
「……そう……。」
小春はななの言葉を聞くと、もう興味が無くなった様に背を向けた。
「っ直哉くん…。」
思わず小春の背中に、直哉の名前を突きつけた。
少し肩をピクッとさせて、今度は少しだけ振り向いた。
「…直哉くんの事…好きなの?」
耳の鼓膜に自分の声が響いている様だった。
声の反響の後に、心臓の音しか聞こえなくて、自分の体内の全ての音が聞こえてくる感じだった。
血が逆流しているとは、こんな感覚なのかもしれない。
ひどい緊張感で、頭から血の気が無くなり、もう視界が上下分からなかった。
「…………ごめんなさい…。」
そこに小春の声が小さく聞こえた。