【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第15章 新しい感情※
直哉は確かに、なながこの部屋にいる間は別の部屋に行く事は無かった。
だけどそれが何だと言うのだろうか。
何度も裏切られた感情が何も動かない。
「…早よ…母屋行っとき…。」
直哉はななにそう言うと、顔を逸らした。
言われた通りに、部屋を出て母屋の奥に向かう。
この屋敷の中で忙しそうに働く女の中で、ななはただぼーっと立っている。
たまに邪魔そうにななを見る目はまだマシな方だ。
大体の人は、なながそこにいても居ないかの様に扱って目線すら合わせない。
自分が出来ることを見つけると、ななはやっと動く。
ななは周りに合わせて働いた所で、それもまた誰も何も言わない。
ななへの扱いは、禪院家にいた頃より遥かに酷くなっていた。
たまに通り過ぎる男達の目線からは、惜しみない嫌悪感が浴びせられる。
それはそうだろう。
あの日、ななは『五条悟』と禪院家から出て行ったのだから。