【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第15章 新しい感情※
あの時、悟の手を取った事に後悔は無い。
むしろ感謝している。
俯いていた顔を上げて、ふと空に目をやった。
あの時も、こんな天気で、この廊下で悟と初めて会ったんだ。
そんな事思ったことも無いのに。
悟に会いたいなと、ポツリ思った。
「なな。」
ここでななの名前を呼ぶ人は1人しか居ない。
聞き慣れた声にななは振り返る。
さっきは不機嫌そうに追い出したくせに、もう耐えられない様な顔をしてななを見ている直哉が居る。
「……もう稽古行くから、部屋戻とって。」
ぎゅっとななの手を握りながら言った。
前はこんな時に、どんな顔を直哉に向けていたのだろうか。
思い出せない。
それでも俯いたまま、コクッと頷いた。
それだけで、直哉の顔は少し緩んだ。
スッと直哉の手が離れて、ななはやっと離れていく直哉に目を向ける事が出来た。