【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第14章 潰れる心※
その時と同じ涙を流していると分かっていても。
自分でその涙を止める事ができなかった。
きっと今、直哉は満足な顔をしてななを見ているだろう。
その直哉の感情に縋り付けば、きっとこの憂いは全て解消出来たはずだ。
だけど、出来ない矜持がななの行動を制御する。
『何?求められて抱かれてないと不安になる?』
馬鹿にされた様な言葉に聞こえていた。
今、この場に対峙して、初めて悟が言った言葉の意味を理解した。
(ううん…悟くん…。)
もうそんな事で、自分を下げることはしなそうで済みそうだ。
ななは顔にかかった着物を避けて、フッと笑った。
そのななの表情に、顔を歪めたのは今度は直哉の方だ。
「…とても似合ってるよ直哉くん。」
そう言ってななは顔を上げて直哉を見た。
その表情は、目の前の現状を受け入れている様な、そんな覚悟が見えた。