【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第14章 潰れる心※
確認しなくても分かる。
彼女があの夜の直哉の相手で。
今、直哉をななの様に献身的に支えているのは、目の前の彼女だ。
直哉の微笑みを受けながら、それが全ての幸せの様に微笑み返す。
その場所に居たのは自分だったのに。
ななの心臓がドクンと強く鼓動を上げた。
体中に血が逆流する様だった。
こんな仕打ちは、直哉のななへの戒めだ。
そう分かっているのに、傷付いた胸が。
涙が出そうなほど昂った感情が。
もう全身を支配している様だった。
(…ああ…もう……。)
この場から早く離れたい。
そう願っているのに、足が動かなかった。
直哉を喜ばれるだけと分かっているのに、涙が勝手に流れ落ちた。
貴方は何度私にこんな惨めな思いをさせるのだろう。
直哉が自分だけで無く、彼女を抱いたと分かった日に。
同じ涙を流した。
悟の目の前で、それがどんなに惨めな涙でも。
直哉への気持ちだけの為に流れた涙だった。