【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第14章 潰れる心※
ななは衣装部屋に戻ると、今度は赤いグラデーションの正装服を手にした。
もう何でもいい。
そんな気持ちもあった。
ななが直哉の前に差し出すと、直哉は同じ様に着物をななに投げつけた。
こんなのは直哉の気まぐれだ。
そう思ってもうこの仕事を放棄しようとした時に、直哉が言った。
「小春ちゃんが選んで。」
その言葉で、ななの怒りで震えていた痙攣が止まった。
「はい。直哉さん。」
自分のすぐ後ろから声が聞こえた。
ななは振り返る事も出来ずに、体が金縛りにあったかの様にピクリとも動かなかった。
すぐに、着物を持って来た小春に、直哉は笑みを浮かべた。
「それに決めた、」
自分は今、何を見せつけられているのだろうか。
なな以外の女が選んだ着物を、直哉は満足そうに見ている。
その横でホッとしながらも、誇らしげさ彼女の表情に。
少し前の自分の姿が重なった。