【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第14章 潰れる心※
ななは渡された女中の紬の着物を着た。
誕生日の会場の準備をさせられるのかと思ったが、通されたのは直哉の部屋だった。
それが何を意味するのか分かって居た。
直哉の正装を選べと言う事だ。
ななは息を吐いて、ゆっくり目を開けると直哉の部屋のドアを叩いた。
入る様にうながされて、ななは襖を開けて頭を下げた。
直哉が声をかけるまで、ななは頭を上げなかった。
「ちゃっちゃっと正装の準備してや。」
直哉の言葉を聞いて、ななは更に頭一つ分下げて部屋を出た。
直哉の衣装部屋に行って、数ある衣装から今日の装いに相応しい着物を選んで直哉の部屋に戻った。
無難な黒い家紋の入った着物に、文句の付け所は無いと分かっていた。
「……気に入らない…。」
直哉はそう言うと、ななが持って来た着物を投げ返した。
バサっと自分にかかった着物の影で、ななの顔がグッと歪んだ。