【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第13章 夏の日
「そんなんじゃ、すぐに他の悪い男に騙されないか心配だなぁ。」
まるで他人事の様に言う悟に、ななの顔がかぁっと赤くなった。
すぐに悟の腕を払って、彼から距離を取る。
「……触らないで…。」
払ったのはななの腕なのに、震えているのもまた、ななの腕だった。
そんなななの腕を見ながら、悟の目が細くなった。
「…お互いフリーで、ななは弱ってて、そこに申し分の無い男が言い寄ってくる。
俺に縋る為の言い訳はスリーカード揃ってるのに、何を躊躇ってるの?」
前髪を掻き分けて、悟はななを見下ろした。
体を離した悟を見上げて、ななは自身の矜持を保つ為に手をぎゅっと握った。
「まさか俺に愛して欲しいなんて、自前勝手な気持ちが働いている訳じゃないよね。」
悟の言う通りだった。
自身の傷付いた心を癒すのに、愛せないと分かっていながら。
悟の気持ちは自分にあると前提のもと、当然の様に考えていた。