第12章 五条悟⑤

「私……直哉くんが憎い……。」

この気持ちが呪いになりそうなほど、誰よりも直哉が憎かった。

術式を持っていて良かった。

この思いが気持ちの悪い呪霊になり、可視化する事はなさそうだ。




俯きながら、そう呟くななを見て、直哉はため息を吐いた。

「なな、不安になるんやったら、しばらくこっちにおったらええ。」




そうすれば、直哉がどれだけななを大切にしているのかまた分かるだろう。

今度は母屋の自分の部屋に連れて行けばいい。

またずっと一緒に居れば、ななの機嫌も治るだろう。




ななを立たせようとして、背中に回した腕をななに払われた。

そのななの行動に、直哉は目を見開いて驚いた。




「もう2度とここには来ないよ。」




顔を上げたななはハッキリと、直哉を拒否していた。

多分今自分は、ななに向けたことの無い顔を見せているだろう。