【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第12章 五条悟⑤
重たいドアが開いて、出て行った時のままの部屋を見て、ななは目を細めた。
ここを離れてまだ3ヶ月程度しか経っていなかった。
なのに、今の自分の環境は随分変わった。
馴染んだ椅子に座って、肘をついてここでの記憶を思い返す。
この薄暗い部屋の中で、自分はいつも直哉を待っていた。
外に出る事も直哉と一緒で、人と喋る事さえ、直哉しかない日がほとんどだった。
あの日々は、それが辛くて、悟が連れ出してくれたけど、東京に残ったのは、自分の意志だったはずだ。
直哉の束縛がキツくて、離れればいい距離を取れると思っていたのだ。
なのに、物理的な距離が離れたら、直哉の気持ちが離れたと言うのだろうか。
そう考えたら、涙が出そうになって、目を顰めて涙を止めた。
ずっとここに居たら、自分が潰れると思っていたのに、離れた今、直哉の心が何処にあるのかまるで分からなかった。