【R18】禪院直哉→私←五条悟❇︎傷だらけの婚約者❇︎
第12章 五条悟⑤
そうだ…直哉くんは何も騙していない。
自分だけが、その直哉の愛に縋っていただけだった。
ななの悟を掴む力が強くなった。
悟は目線を落として、ななを見ると、スッとななの顔色が変わった。
もう震えていないその顔を見て、悟はニヤッと笑った。
「……自分で対処出来る。」
ななはそう言うと、悟から離れた。
その足でななが向かった先は、あの蔵だった。
悟の結界から離れたななはすぐに禪院家の人間に見つかる。
自分に駆け寄ってくる人達を見ながら、ななは低い声で言った。
「開けてください。」
蔵の大きな南京錠を指してななは言った。
この禪院家で、ななが自由に出来る場所は、ここしか無かった。
それすらも、誰かにお願いしないと入れない、自分の部屋だった。
直哉と禪院家の人間は母屋に居るのに、自分は蔵に居る。
母屋を勝手に歩けない、これがななの禪院家での在り方だ。