十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第6章 6
潤さんはセーターに突っ込みかけて手で僕の腰をギュッと抱くと、肩越しに僕の俯いた顔を覗き見た。
「確かに俺は、抱くよりも抱かれる方が多分好きなんだと思う」
やっぱり…
いよいよ覚悟を決める時が来たんだと、僕はこっそり握った拳に力をこめた。
でもそうじゃなかった。
「でもお前…智だけは、どうしてだが抱かれたいって気持ちは湧いて来なくて、寧ろ抱きたいって気持ちの方が強い…かな」
「それって…?」
言われて咄嗟に潤さんを見ると、潤さんは凄く優しい顔をして笑っていて…
「特別…って言うのかな。智は、今まで俺が出会った誰とも違う…って言ったら良いのかな…」
普段はしっかり頭の中で文章を纏めてから口にしがちな潤さんが、珍しく一言一言言葉を選びながら言ってるのが分かる。
僕は腰の辺りで少しだけ震えている潤さんの手に自分の手を重ねた。
「じゃあ…、僕のこと、抱いてくれますか」って。
そしたら潤さん、ちょっぴり濃いめの眉毛をキュッと下げて、長い睫毛で縁取られた目を細めた。
「下手かもしれないけど、良い?」って。
僕はその時気付いたんだ。
潤さんにとって僕が特別なのは、初めて抱きたいと思った相手だからってのもあるけど、初めて潤さんが抱く相手だから、ってことでもあるんだと。