十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第5章 5
そこまで笑うかってくらい笑って、雅紀さんは僕の肩にポンと手を置いた。
「ごめんごめん、オレもそれは想像したこと無かったわ」って。
そして僕の背中を押して、カウンター席に座るよう促すと、雅紀さんは僕の隣に座り、肩肘をカウンターに着いた格好で僕を覗き込んだ。
「智はさ、潤もし〝抱いて欲しい〟って言ってきたら、受け入れられる?」
「え…っと、それは…」
多分…だけど、受け入れることは可能だとは思う。
でも、経験豊富(多分)な潤さんを、僕が満足させられるかって言ったら、そこは正直僕にも分からないし、不安でもある。
だって僕、そっちは未経験だし…
「難しいかもしんない?」
「う…ん…」
僕は素直に頷いた。
雅紀さんの前で嘘つく必要も、カッコつける必要もない。
「だよね? でも安心して?」
「え?」
「潤ね、オレに言ったんだよね…」
「なん…て?」
今度は僕が雅紀さんを覗き込んだ。
「潤ね、智が初めてなんだってさ」
「は?」
いつものことだし、大分慣れては来たんだけどさ、雅紀さんの話は重要な部分が抜けがちで、良く分かんない。
「だからさ、潤が初めて抱きたいって思えた相手なんだよ、智は」
「え、え、えと…」
なんだろ…、そんな風に思ってくれてるなんて知らなかったから、ちょっと恥ずかしいけど、でも…
嬉しい。