十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第5章 5
どこをどう歩いて来たのか、気付いたら潤さんのマンションまで来ていた。
雅紀さんの店からなら、確実に家の方が近かったのに、どうして家に帰らなかったのかは、良く分からない。
ただ、あのまま家に帰る気には、どうしてもなれなかったことだけは確かで…
でも他に行く所なんてないから、多分潤さんの所に来てしまったんだとは思う。
潤さんは、ずぶ濡れになって玄関ドアの前に座る僕を見ても、全く動じることなく、そっと肩を抱いてくれて、それから僕をバスルームに行くようにと促した。
多分…だけど、雅紀さんから連絡を貰っていたんだと思う。
冷えた身体にシャワーを浴び、僕が泊まった時用にと、潤さんが用意してくれたスウェットを着てリビングに入った僕を、潤さんはソファに座らせてくれて、それから温かいココアを出してくれた。
「ごめん…なさい、突然来ちゃって…」
視線を手元のココアに落としたまま僕が言うと、潤さんは何も言わずに僕の隣に座り、僕の濡れた頭をそっと撫でてくれた。
でもさ、その手が今の僕には暖か過ぎて…
泣いちゃいけないって思ってるのに、自然に涙か溢れて来て、ポタポタとココアの中に落ちた。
それでも潤さんは何も言うことなく僕の頭を撫で続けた。
僕が泣き止むまで、ずっと。