十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第4章 4
そうだ、僕は絶対この人とはシテない。
確信はしてた。
でもやっぱり確かめなきゃ。
「あ、あの!」
「ん? なに?」
漸く決まったジャケットを着て、姿見の前に立った潤さんが、鏡越しに僕を見る。
素顔はこんなに男っぽいのに、ウィッグとリメイクで、しっかり女の人になっちゃうんだもんな…
人って分かんない…って、感心してる場合じゃない。
「僕、昨日…あなたと、その…」
「セックス…したのか、って?」
ストレートに聞かれて、僕は自分の顔が熱くなるのを感じながら頷いた。
「お前は? どっちだと思う?」
「それ…は…」
シテない…、僕には自信がある。
僕の身体だもん、自分の身体は自分が一番分かってる。
でもどうしてだろう、言葉が出て来ない。
「どっちでも良いんじゃない?」
「え?」
「お前が〝シタ〟った思えばシタんだろうし、〝シテない〟って思うなら、シテないってことなんだろ」
「は、はあ?」
何が言いたいのか、ちょっとどころか全然分かんない。
「行くぞ」
混乱する僕の頭を、潤さんの大きな手が撫でる。
あ…れ?
この感じ…なんだか凄く久しぶりな気がする。
あ、そっか、僕が困った顔すると、翔くんが良く頭撫でてくれたっけ…
だからか…な。