十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第4章 4
雅紀さんが暖簾を仕舞い、看板を照らしていたライトを消す。
前掛けを外し、カウンターに無造作に置くと、ニノの隣の席に腰を下ろした。
「あー、疲れた」
「何だよ、ジジくさいなあ、もぉ…」
「ジジイって…、三つしか違わないけど?」
文句を言いながらも、心なしか嬉しそうにしてる雅紀さんを見ると、やっぱり好きなんだなって…
何だかちょっとだけ羨ましく感じてしまう。
「ねぇ、時間あるんでしょ? 一杯付き合ってよ」
「俺は良いけど、智は?」
「僕もちょっとだけなら…」
せっかくだし、たまには良いよね?
僕は早速母ちゃんにLINEを送ると、出されたグラスを受け取った。
三人でクラスにビールを注ぎ合い、何にだか分かんないけど乾杯をしてから、一気に喉に流し込む。
久しぶりに飲むビールは、やたらと苦味ばかり感じるけど、この雰囲気がそうさせるのか、凄く美味しく感じる。
勿論、雅紀さんが出してくれるツマミも相まってのことだろうけど。
僕はあっという間に空になってしまったグラスを、ニノに向かって差し出した。
「あんま調子乗って飲みすぎないでよ? あと送ってくの俺なんだから」
「分かってるよ、そんなこと」
僕にだってちゃんと〝理性〟ってもんはあるんだから。
ちょっぴり拗ねて、ニノではなく雅紀さんに差し出した丁度その時、店の戸がカラッと音を立てて開いた。