十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第3章 3
何事もなく四十九日も済み、その頃には少しづつ日常を取り戻していた僕は、相変わらずだらしなく日々を過ごしていた。
でも、母ちゃんはまだ父ちゃんのいない生活には慣れないみたいで、たまに「父ちゃん」と言いかけては、小さく溜息を落とす姿を何度か目にした。
その度に僕は、僕が母ちゃんを支えなきゃって…、勝手に自分に言い聞かせていた。
そんなある日、いつものように向き合ってご飯を食べていると、母ちゃんが不意に「そういえば…」と話を切り出した。
「あんた、翔くんとは連絡とれたの?」
「え…、ああ、んと…」
翔くんのことを忘れたことは、あの日以来一日だってありはしない。
連絡だって、どうにかとろうとしたけど…
「僕の前の携帯ダメになっちゃったじゃん?」
「でも新しいの買ったでしょ?」
「そう…なんだけど、翔くんの連絡先が分かんなくって…」
「和也くんは? あの子なら知ってるんじゃないの?」
確かに母ちゃんが言う通り、ニノなら翔くんの連絡先を知っているし、実際かけて貰ったこともあった。
「でもさ、翔くん番号変わってるらしくてさ…」
結局、翔くんの会社に問い合わせてくれたり、色々手を尽くしてはみたけど、何の情報も得ることは出来なかった。
「翔くんのご実家は? ご両親なら何か…」
「ダメだよ。翔くんの父ちゃん海外赴任中だもん」
僕たちを繋いでいた細い糸は、あの日の事故をきっかけに、プツリと切れてしまっていた。