十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第3章 3
暫く待っていると、丼を三つ乗せたお盆を手に、母ちゃんが戻ってきた。
「せっかくだから、三人で食べようかと思って」
母ちゃんはお盆を畳の上に置くと、一つだけやたらと大盛りの丼を、祭壇の前に置いた。
「いただきます」
僕は手を合わせてから、丼を手に取った。
「久しぶりね、こうやって三人で食事って…」
「そう…だっけ?」
「そうよ? 智ってば、いっつもバイトから帰って来ると部屋に直行しちゃって、顔すら合わせない日だってあったじゃない」
「確かに、そうかも…」
僕はちょっとだけ申し訳ない気持ちになったけど、バイト先で食べて来るからって、僕のご飯用意してくれなかったの、母ちゃんの方なんだからね?
「 なんか…美味しいね」
お世辞でも何でもなく、心からそう思った。
「そう? インスタントだけど…」
「そ、そうかもしんないけど、美味しいんだもん」
母ちゃんが言う通り、どこにでも売ってるような、お湯入れたら出来上がり…みたいな物なんだろうけど、今まで食べたどんな物よりも美味しく感じて…
多分…だけど、この雰囲気がそうさせてるんだろうなって…そう思ったら、急に涙が溢れて来て…
「あ、あれ…、なんか変…」
僕は箸を持ったまま、袖口で涙と、同時に流れて来た鼻水を拭った。