十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第3章 3
ニノと一緒にタクシーで家に帰った僕は、それまでとは違う… 一変してしまった様子に、戸惑いを感じた。
別に内装が変わったとか、そんなんじゃない、空気が違うってゆうか…、まるで他所の家に来たような、そんな感覚だった。
「荷物、ここ置くね」
「うん、ありがとう」
「じゃ、俺行くけど、何かあったらさ、いつでも呼べよな?」
「うん、そうする」
玄関先でニノを見送ると、僕は一つ深呼吸をしてから、住み慣れた家へ足を踏み入れた。
「ただいま。母ちゃん、どこ?」
言いながら、そう大して広くはない家の中を探して歩く。
でも母ちゃんが普段いそうな場所には、どこにも姿が見えなくて…
僕は家に入った瞬間から感じていた匂いを頼りに、奥の和室へと向かった。
「母ちゃん、いるの?」
声をかけ、引き戸を開けると、その匂いは一段と強くなり…
「母…ちゃん」
簡易的な祭壇の前で、乱れた髪もそのままに、背中を丸める母ちゃんに、僕は躊躇いつつも声をかけた。
「あら智…、帰ったのね。和也くんは?」
「ニノならもう帰ったよ」
「そう…」
それきり何も言わなくなった母ちゃんが、それまで座っていた座布団から降りる。
そして無言のまま、僕にそこへ座るようにと促した。