十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第3章 3
でもどこにも父ちゃんの姿はなくて…
「母ちゃんは?」
心配性な母ちゃんのことだから、こんなことになってきっと心配してる筈。
なのにどこにもいないなんて…、変だよ。
僕の胸に、とてつもない不安が込み上げて来る。
「ね、ねぇ、父ちゃんとこ連れてってよ…」
僕は痛む身体を無理やり起こし、無言で俯くニノの肩を揺さぶった。
「それが無理なら、母ちゃん呼んでよ…」
母ちゃんは、僕が風邪で寝込んでる時だって、夜通し僕の傍にいてくれた。
それこそ、姉ちゃんが「甘やかし過ぎ」って苦言を呈するくらいだった。
そんな母ちゃんが、僕の傍にいないなんてこと、絶対にないんだよ。
「早く母ちゃん呼んでよ。お願いだから…」
不安で不安で仕方なかった。
でも、どれだけ僕が強請ってもニノは俯いたままで…
「もういい…、ニノには頼まないから…」
何も答えてくれないニノが悪いんじゃない、そもそもニノに頼ろうとした僕がバカだったんだ。
僕は自力で何とかしようと、ベッドから降りようとしたけど…
「落ち着けって…!」
ニノの強い口調に引き止められた。
「分かったからさ、ちょっと落ち着こうよ。ね?」
小さく息を吐き出したニノは、ベッドに僕を押し戻し、小さな子供に言い聞かせるような口調で言うと、意を決したように表情を引き締めた。