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十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】

第3章 3


僅かな記憶を頼りに、あの日のことを思い出してみるけど、僕が覚えているのは、空港の屋根が薄らと見えて来た景色だけで、それ以降の記憶が僕には無い。

「あの日、雨だったでしょ?」
「う…ん…」

傘なんていらないって言ってんのに、母ちゃんがしつこく「傘は?」って聞いてきたのを覚えてる。

「でさ、まだはっきりとは分かってないんだけど、多分…脇見だったんだと思うんだよね…」
「うん…」

僕は頷いてみせるけど、正直ニノが何を言ってるのか、さっぱり分からない。

「トラックが…さ、中央分離帯乗り越えて突っ込んで来て、それで…」

そこまで言ってニノが声を詰まらせる。

普段、何でもハッキリ言うニノだから、声を詰まらせるなんて、よっぽどのことが起きたんだってことは、僕にだって想像出来たし、その先を聞くのが怖い気持ちもあった。

でも、あの日何があったのか、僕は知りたかった。

「それで…、どうなった…の?」
「それで…、警察の話だと、急ハンドル切ったらしいけど、間に合わなくて、追突された衝撃で車が横転したって…」
「そう…なんだ?」
「…うん」


そっか…、じゃあ僕が見たあの赤い光は、パトカーだか救急車だかの警告灯だったんだ?


「あ、ねぇ、父ちゃんは?」

後部座席に座っていた僕でさえ、こんなに身体中が痛いんだもん。
運転してた父ちゃんだって怪我をしてるかもしれない。

僕は視線だけを動かして、病室を見回した。
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