十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第3章 3
それからニノも、「行くな」だの自分も連れてけだの、散々駄々を捏ねてたけど、最終的には「勝手に幸せになれば?」って…
憎まれ口に聞こえなくもないけど、ニノなりの優しさで僕を送り出してくれた。
何もかもが、順調に行っている…筈だった。
出発の日の朝、玄関先で母ちゃんの小言を聞きながら、僕は翔くんに「今から出る」とだけLINEを送った。
返事は無かったし、既読にもならなかったけど、それもいつものことだからと、僕はスマホを上着のポケットに突っ込んだ。
「チケットは? ちゃんと持ったの?」
「ねぇ、それ何回目? チケットは翔くんが持ってるって、昨日も言ったじゃん」
「あ、そ、そうだったわね」
相変わらず心配性なんだから…
「じゃ…、行ってくる」
「気をつけて…ね」
「うん」
僕は母ちゃんに見送られ、大きなボストンバッグ一つを抱え、家を出た。
外では、父ちゃんがエンジンをかけたまま、僕が車に乗り込むのを待っていた。
僕的には、電車やらバスやらを乗り継いで行けば良いと思ってたけど、元々僕が超方向音痴なことや、生憎の雨とが重なって、父ちゃんが車で空港まで送ってくれることになった。
玄関ドアを開け放ち、心配そうに僕を見る母ちゃんに手を振ると、僕を乗せた車が静かに動き出す。
この時、もし僕が方向音痴じゃなかったら…
もし雨が振っていなければ…
僕の未来はきっと違っていた…んだろうな。