十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第1章 1
「大事にするね」
「当たり前だ」
「肌見離さず着けとくから」
「それは大袈裟でしょ」
「全然大袈裟なんかじゃないから」
その言葉通り、僕は翔くんに貰ったブレスレットを。本当に本当に大事にしてたし、手首に着けられない時は、こっそりズボンの尻ポケットに忍ばせておいたりしてさ…
だから、どこかに置き忘れたり失くすことなんて、絶対に有り得ないって思ってたのにさ、まさかの事態って起こるもので…
しかも、失くなったことに気付いたのが、あろうことか翔くんとのデート当日だったなんて…
僕は翔くんに申し訳ない気持ちと、自分のだらしなさに自己嫌悪しながら玄関を出た。
至極短い玄関アプローチを抜け簡素な門を開くと、二人で乗るには十分過ぎる車内の広々とした、一台のワンボックスカーが停まっていた。
運転自体得意でも好きでもない翔くんだから、僕的にはちょっぴり贅沢に思えてしまうレベルだけど、翔くん曰く…
「デカい方が何かと安全」なんだそうだ。
そんな〝安全第一〟を考えた車で、運転免許を持たない僕を、翔くんはいつもわざわざ遠回りして迎えに来てくれる。
一見ぶっきら棒にも感じる翔くんだけど、実はさりげない優しさで僕を甘やかしてくれているのを僕は知っているし、器用そうに見えて実はとっても不器用なところも、僕が翔くんを好きな理由の一つでもある。