十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第2章 2
「怖い?」
僕の異変に気付いた翔くんが、僕の身体をゆっくり抱き起こし、厚い胸に包んでくれる。
なんか…、さっきまでが嘘みたいに、凄く落ち着く。
「今、智くんの目の前にいるのは誰か分かってる?」
「翔くん…でしょ?」
僕の目がどれだけ悪くなつたとしても…もしも、僕の目が見えなくなったとしても、翔くんの匂いも声も、それから体温も、絶対間違うことない、って僕は自信を持って言える。
「だろ? だったらさ、もう怖がんな」
「翔…くん…」
「大体っ! 俺だって怖いんだぞ?」
「え、どう…して?」
そりゃ…、見た目に反して整理整頓苦手だし、高所恐怖症だし、案外ヘタレなとこもいっぱいあるけど、いつだって自信満々な翔くんが?
「俺のコイツがさ…」
「コイツ…?」
「そう、コイツ」
そう言って、翔くんが自分の下半身を指さすから、僕もその先を追うけど…
「えと、〝コイツ〟って、まさか…」
「コイツさ、俺と違って優しくないからさ、智くんのことぶっ壊しちゃうんじゃないかと思うとさ、怖くて怖くて…」
え、もぉ…こんな時に何冗談言ってんの?
でも…
笑ったおかげで少し気が楽になったのは確かで…
「優しくしてね?」
僕は翔くん自身に語りかけると、待ちきれないない様子で僕を見上げる先端を、指の先で弾いた。