十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第2章 2
僕は渾身の力で覆い被さる翔くんを押し返すと、すっかり肌蹴てしまったバスローブの襟を掻き合わせた。
翔くんがどんな表情をしてるかなんて、顔を見なくたって分かってたから、敢えて視線を逸らしたまま顔を背けた。
「ごめ…なさい…」って、涙で詰まった喉で呟きながら…
そしたら翔くんさ、僕の髪を撫でてくれて、それから今にも零れ落ちそうなくらいに溜まった目尻の涙を、指でそっと拭ってくれて…
その手が、指が凄く暖かくて…
過去のトラウマに囚われ過ぎて、結果翔くんを拒み続けている自分が、酷く情けない存在に思えてしまう。
「ごめん…ね、翔くん…」
「いや、俺の方こそ焦り過ぎた」
「そ、そんなことないよ…」
翔くんは悪くない。
悪いのは、翔くんの気持ちに応えられない、僕なんだから。
「でもさ、智くん?」
身体を起こし、素肌にバスローブを纏いながら、翔くんがポツリ言う。
「このままだと俺…、いつか浮気しちゃうかもしんないよ?」
「え…?」
さっきまで散々僕の浮気を疑っていた翔くんが浮気って…、どういう意味?
「実は俺さ、転勤になるんだ。だから暫く会えなくなる…っつーか、さ…」
「え、いつ? どこに転勤になるの? 暫くってどれくらい?」
突然の告白に気が動転した僕は、責め立てるように翔くんへの質問を繰り返した。